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宇都宮家庭裁判所 平成8年(家)151号 審判

申立人 浜奈美枝

相手方 大石繁高

事件本人 浜志津子

主文

1  相手方は申立人に対し、金62万1000円を支払え。

2  相手方は申立人に対し、平成8年10月から事件本人が成年に達する月まで、毎月末日限り、金4万8000円ずつを支払え。

理由

1  申立ての趣旨及び実情

申立人は相手方とかつて内縁関係にあり、昭和52年7月に事件本人を出産し、相手方は事件本人を認知した。相手方からは現在まで何の援助もなく、申立人も要求しなかったが、事件本人に進学の希望があり、経済的に困窮しているので、相応の援助を求める。

2  当裁判所の判断

1 本件記録中の資料、家庭裁判所調査官○○の調査報告書、申立人本人の審問の結果によれば、次の事実が認められる。

(1)申立人は、兄の友人であった相手方と付き合うようになり、昭和52年7月11日に相手方の子である事件本人を出産した。相手方は同月22日に事件本人を認知する届出をした、申立人は事件本人の出生後、乾物屋などを営み、児童扶養手当の給付などを受けながら、相手方の援助を受けることなく、事件本人を一人で養育してきた。しかし成長した事件本人に短大進学の希望が強く、本年4月から事件本人は短大に進学し、大阪府○○市の寮に入って生活している。申立人は経済的に余裕がないことから、相手方に対し相応の援助を求めて、平成7年7月に本件調停を申立てた。

相手方は調停に一度も出頭せず、再三の出頭勧告や調査官の調査にも応じなかった。調停は審判に移行した。

2 養育費の算定

(1) 申立人は自営(食品青果小売)業である。平成7年の所得税の確定申告(青色)によると、収入は410万9130円である。特別控除後の所得金額は、86万5610円となり、月平均7万2134円となる。これは課税額に満たないものである。しかし申立人の陳述等から、月々の具体的な生活に回る金額は月10万円程度はあると見られるので、申立人の収入は10万円として算定する。

(2) 事件本人は本年4月短大に進学したが、申立人による被扶養状態は続いているものである。事件本人の2年間の学費等の総計は月平均7万0925円であり、寮費は月2万0500円であるが、しかし短大進学は事件本人の自由意思に基づくものであること、事件本人もアルバイトや奨学金などにより相当額の収入を得られると考えられること、これらについては事件本人の兄も負担していることなどから申立人の負担額を算定するに当たってはこれらはすべて考慮しないこととする。

(3) 相手方については、家族状況、職業、収入、支出などに関する資料が全く得られない。そこで、家族については、住民票から6人家族同居と推定し、相手方の子は全員成人しているので、父が扶養する必要はないものとし、相手方の妻及び母を被扶養家族とする。相手方の職業は、申立人の陳述によりダンプカー持込みの運転手と認める。またその収入については、平成6年の「賃金構造基本統計調査報告」(賃金センサス)中の「営業用大型貨物自動車運転者(男)及び営業用普通・小型貨物自動車運転者(男)50~54歳」企業規模別及び都道府県別に拠ることとする。そうすると相手方の月額収入は、きまって支給する現金給与額の平均の36万5000円とするのが相当である。持込み運転手であることを考慮して年間賞与などは含めないこととし、職業経費を30パーセント認め、結局相手方の算定の基礎となる収入を、25万6000円とする。

その上で、平成7年7月分以降の事件本人の養育費を算定するに、本件では算定にあたり不確定な部分が非常に多いため、それらに係わりなく事件本人個人単位で計算できる生活保護1類に着目して算定することとし、事件本人の養育費として相当な額を、生活保護基準額の約1.5倍とする。そうすると烏山町では4万7775円、大阪府枚方市では6万1650円となる。そこで、これに対する父母の負担額をおのおのその余力で按分する方式で算定したうえ、その結果に諸般の事情を勘案すると、相手方の負担する養育費の額は、平成7年7月から同8年3月までは毎月3万7000円、同8年4月以降は毎月4万8000円とするのが相当である(本件ではかかる算定方法をとることもやむを得ない。)。そしてその終期は、事件本人が満20歳に達する月までとするのが相当である。そうすると相手方は申立人に対し、事件本人の養育費として、平成7年7月から平成8年3月まで9か月間の33万3000円と平成8年4月から9月まで6か月間の28万8000円の合計62万1000円、及び平成8年10月から事件本人が20歳に達する月まで毎月4万8000円を支払うべきである。

以上の次第で、主文のとおり審判する。

(家事審判官 島田充子)

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